第18回は、全国の小学生から
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作品の応募がありました。
審査の結果、最優秀賞1名、シナネン賞1名、ミライフ賞1名、朝日小学生新聞賞1名、優秀賞6名、入選14名、団体賞5校の各賞が決定しました。
森田正光
(気象予報士)
"ねたきりでもいいから生きててね"と言う書き出しで、作者のじいじへの深い敬愛と心配している様子が感じられました。また「自分が大きくなるまで生きていて欲しいと」との純粋な気持ちも心に響きます。じいじの光った頭をペンペンするという表現も子どもらしいユーモアがあふれていて、大人には書けない文章でしょう。昔、私自身の経験ですが鉄棒から落ちて足の骨を折るというケガをしました。その時母親が「良かった良かった、ケガで済んで良かった」と言いました。この時私は、母の愛情と足は痛かったけれど、なんとなく安心したことを覚えています。今回の作文を読んで、孫から「生きててね」と励まされたじいじは、とても幸せだと感じました。また読者にも温かな気持ちと感動を与える素晴らしい作品だと思います。
小島奈津子
(フリーアナウンサー)
今年も、感心したり、笑ったり、ほろりと涙がこぼれたり...近しい人に贈る「ありがとう」は、普段なかなか言葉にしにくいだけに、深みと重みが感じられますね。ミライフ賞の能美さん、受賞おめでとうございます。低学年で書かれた作文では、忙しいお母様が、夜、制服のプリーツスカートにアイロンをかけてくれて、毎日ありがとうと感謝していたになさん。5年生になり、今や積極的におうちのお手伝いをされているのですね。『名もなき家事』の苦労は、実際に体験しないと分からないことですので、になさんがいらいらしたり、悪態をつくのは、とてもリアリティーがあります。『名もなき家事は、マイナスをゼロに戻』して『日常を整えること』とし、お母様を『ゼロ・クリエイター』と名付ける。私の日頃の苦労も分かってもらえたような気がして!すっと胸に落ちるものがありました。普段の何気ない作業の気付きを、見事に言語化できている作品だと思います。今回もまた、能美家の笑顔や優しさの情景が目に浮かびました。
吉田 由紀
(朝日小学生新聞)
思春期の息子とお父さん。もちろんベースには愛情があるけれど、おたがいイラッとする場面も……そんな距離感が絶妙に描かれています。メロンソーダとゲームがある自分だけの幸せな時間を、理不尽に邪魔する(と息子は思う)父ちゃん。腹立たしい気持ちを、短い文章でリズミカルにたたみかけてきて、説得力があります。ところが突然の祖父の死を機に、心の奥にあった父ちゃんとの温かい思い出が、次々と浮かんできます。それでも、父ちゃんのいいところはいっぱいではなく「多め」で、感謝の気持ちもここに書くのではなく「言ってみようかな」と締めたところが、照れくささを隠さず好もしく感じました。メロンソーダを卒業してコーヒーを父子で飲むようになっても、きっと通じるところのある二人なんだろうな、と温かい気持ちになりました。
都道府県:福島県
学校名:郡山市立
大槻小学校
都道府県:群馬県
学校名:高崎市立
六郷小学校
都道府県:愛知県
学校名:扶桑町立
扶桑東小学校
都道府県:広島県
学校名:福山市立
金江小学校
都道府県:福岡県
学校名:宇美町立
井野小学校
あさのあつこ
(作家)
あさのさんコメント
植田樹里さんの「こころやさしいなきむし」を読み終えたとき、むかし、むかしの思い出が、わっとよみがえってきました。わたしにも九才年下の弟がいます。その弟に「ねえね、きらい」と言われたときのショック。そのショックの後、じわりと腹が立って弟がとても憎らしく思えたことなどが、びっくりするくらいあざやかに思い出されました。それは、植田さんの文章がすばらしくて、弟のきはるくんが目の前にいるように感じられたからです。柴犬の赤ちゃんみたいなたれ目とかいちごマシュマロみたいにもふもふしてとか、表現がすてきです。もうこれだけで、きはるくんのかわいさが伝わってきます。そして、植田さんのイライラや怒りやもどかしさも、しっかりと書き込まれています。だからこそ、お姉ちゃんと弟くんの、あたたかで強いつながりを感じさせてくれるのです。原稿用紙二枚半のこの作品には、人が幸せに生きていくヒントがあるような気がします。植田さんのように、自分の心をまっすぐに見つめること。相手の優しさをちゃんと認めること。植田さん、すてきな作品を読ませてくれて、ありがとう。わたしも、久しぶりに弟とおしゃべりがしたくなりました。